2018年に読んだ面白かった本まとめ
小説
1位「春にして君を離れ - アガサ・クリスティ」
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバグダッドからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…女の愛の迷いを冷たく見据え、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
「BOOK」データベースより
今年読んだ小説の中で一番よかったのは、古典ですがアガサ・クリスティの「春にして君を離れ」でした。学生時代から自分のことを「模範的であり理想的」だと思い込んでいる女性が、ふとしたことから砂漠の駅に数日間足止めをくらうことになり、その中で自分のこれまでの人生が果たして本当に「模範的で理想的」だったのかを振り返るという話なのですが、この作品の名作たる所以は、砂漠での滞在中に真実に気付いたものの、いざイギリスに帰るとその啓蒙は消えてしまい、結局何も変わらなかったというところかと思います。人は砂漠に数日間滞在するくらいでは変われないし、この作品の主人公のように、自分を模範的だと思い込んできたような人ならなおさら。この作品は、自分を取り巻く不都合な真実に目を向けられない人達にとっては呪いのような本だと思うけれど、自分が40代になったら必ず再読したい、不都合な真実に目を向けられる人間でありたい、と思わせてくれる作品でした。
2位「高慢と偏見 - ジェイン・オースティン」
経済的理由で好きでもない人と結婚していいものだろうか。いつの時代も幸福な結婚を考える女性の悩みは変わらない。エリザベスとダーシーの誤解からはじまるラブロマンスは、いつ読んでも瑞々しく、オースティンの細やかな心理描写は、ときおり毒もはらむがユーモラスで、読後は幸せな気持ちにさせてくれる。愛らしい十九世紀の挿絵五十余点収載。
「BOOK」データベースより
2番目に良かったのは、これまた古典ですが「高慢と偏見」。タイトルはお堅い感じですが、内容は少女漫画のテンプレみたいな作品です。この作品の魅力は何と言っても登場人物全員キャラが立ってるところ。主人公エリザベスをはじめとした主人公一家はもちろん、個人的にはコリンズのキャラが好きです。当時のイギリスにおける結婚というものの常識がベースにはなっているものの、実は今の日本とも本質的なところはそう大きく変わらないのではないかと感じられ、その普遍性こそが、今でも楽しく読める秘訣なんだろうなと思いました。翻訳もとても読みやすかったです。
3位「なれる!SE - 夏海公司」
平凡な社会人一年生、桜坂工兵は厳しい就職活動を経て、とあるシステム開発会社に就職した。そんな彼の教育係についた室見立華は、どう見ても十代にしか見えないスーパーワーカホリック娘で!?多忙かつまったく優しくない彼女のもと、時に厳しく指導され、時に放置プレイされながら奮闘する工兵。さらには、現場を無視して受注してくる社長のおかげで、いきなり実際の仕事を担当させられることになり―。システムエンジニアの過酷な実態をコミカルに描くスラップスティック・ストーリー、登場。
「BOOK」データベースより
前々から読みたかったのですが、未完結の作品を読むのが好きではなく躊躇していたところ、完結したということで今年一気に読みました。私も前職SE(アプリ側だったので本作でいうSD部ですが)だったので、当時のヒリつくような現場感や、自分でモノを作り上げたときの得も言えぬ快感など、色々と思い出しながら読んでいました。ラノベなので基本トントン拍子で話は進むし、事実よりファンタジックに描写されている部分は当然あるものの、可愛い女の子がたくさん居る以外は大体現実もこのまんまなので、SEになりたい就活生とかは一回読んでおくと良いかと思います。姪乃浜さんがかわいい。次郎丸さんはファンタジー。
小説以外
1位「AI vs. 教科書が読めない子どもたち - 新井 紀子」
東ロボくんは東大には入れなかった。AIの限界ーー。しかし、"彼"はMARCHクラスには楽勝で合格していた!これが意味することとはなにか? AIは何を得意とし、何を苦手とするのか? AI楽観論者は、人間とAIが補完し合い共存するシナリオを描く。しかし、東ロボくんの実験と同時に行なわれた全国2万5000人を対象にした読解力調査では恐るべき実態が判明する。AIの限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌だという。では、最悪のシナリオを避けるのはどうしたらいいのか? 最終章では教育に関する専門家でもある新井先生の提言が語られる。
小説以外で一番面白かったのは、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」。非常に分かりやすい構成で、まず「AIに何ができて、何ができないのか」と「人間に何ができて、何ができないのか」をデータを以て解説した上で、「今の子どもたちには、AIができるようなことしかできない」ことを示しています。ちなみにこの本が述べているのは、「今の子どもたちには文章の意味を理解できない」ということだけれど、子どもたちだけでなく、個人的な印象としては、大人も同様に、実は文章の意味を理解できていないのではないかと思います(というか、同じような教育をしてきていて、昔の人は読解力があり、今の子どもには無いという方が不自然)。文法や単語はわかるけれども、そこから演繹・推察して、「だから何が言えるのか」を導きだすことは、実は多くの人にできていないことなのだと感じました。
2位「ロジカル・シンキング - 照屋 華子」
本書の狙いは、体系立った、しかもシンプルで実践的なロジカル・コミュニケーションの技術を習得することにある。あえてこれを「技術」と呼ぶのは、これまでの経験から訓練を積めば誰でも身に付けられると確信するからだ。
小説以外で今年読んだ本としては、こちらも非常に面白かったです。ベストセラーであり、ロジカルシンキングの入門書ではあるけれども、実際考え方と伝え方の両方の面で、非常にわかりやすくまとまっています。考え方の基本は一言で言えば「So What?/Why So?」ですが、これは上述の「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」で触れられている、文章の意味を理解できないという点にも繋がっていて、結局読解力というよりは、「その文章から何が言えるのか(So What?)」が語れないということなのかなと思います。この本はどちらかというと伝え方に重点を置いた本ですが、考え方に重点を置いた本があって、それをちゃんと学べば、AIができないことをできるような人間になれるのではないかなと思いました。
3位「美しい幾何学 - Eli Maor , Eugen jost」
ピタゴラスの定理や2の平方根といった教科書でおなじみのテーマにどのような印象をもっていますか?数学の奥深さに感動を覚えた方もいれば、ややこしい証明や殺風景な図に嫌気がさした方もいるかもしれません。この本には、いままでとはまったく異なる感動があるはずです。この本は、数学者と芸術家がタッグを組むことで実現しました。「ものを測る」という必要性からエジプトで生まれた幾何学がどのように発展してきたかを、まるで芸術作品のように魅力的な挿絵とともに解説します。教科書で学んだことのある定理がどのように発見されたのか、その背景や人物模様も興味深い内容です。各章は独立していますので、聞いたことのある名前、お気に入りの定理から気軽に楽しく読み進めることができます。数学の形式的な「美しさ」、図形的な「美しさ」、そして数学という営みの「美しさ」をぜひ実感してみてください。
最後に紹介するのは、面白くて美しい幾何学の世界を、アート作品として表現したこちらの本。ひとつひとつの定理と作品に対して解説があり、数学の美しさは絵にしても美しいのだと改めて認識させられました。数学好きな高校生あたりが読んでみると、非常に良いのではないかなと思いました。
以上!