昇進させる人物をランダムに選んだ方が、組織はより効率的になることを数学的に証明したことについて
2010年という古い話ですが、こんな研究がイグノーベル賞をとっていたそうです。
普通に考えれば、仕事できる人が昇進して、できないやつが下っ端に残る方がいいと思うんですが、
これはその直感、常識を全否定してる。
全国のサラリーマンがファビョりそうな、挑発的なタイトルです。
しかし、わざわざ「数学的に」と書いてる通り、別に根拠もなく言ってるわけではないのです。
その根拠の前提となっているのが、もうかれこれ40年以上前に提唱されている、
「ピーターの法則」と呼ばれる社会学の法則です。
ピーターの法則
詳細はWikipedia先生にお任せするとして、
内容を簡単にまとめると以下のような感じです。
1.能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。その結果、各階層は無能な人間で埋め尽くされる。
要するに、平社員としても無能なやつが一生平のまま残り、
平としては優秀だが課長としては優秀でないってやつが課長のまま残り、
課長としては優秀だが部長としては無能ってやつが部長のまま残り・・・。
ということが全ての階層で起こり、
最終的には全ての階層が、それ以上上に行けない能力不足の人材で埋め尽くされてしまうということです。
2.その組織の仕事は、まだ出世の余地のある、無能レベルに達していない人間によって遂行される。
最終的には上のようになるのですが、
実際のところ人間はせいぜい40年くらいしか働けないし、毎年新しい人間も入ってくるわけで。
では、実際はどうなっているのかというと、その組織における「仕事(意味するところはイノベーションとかに近いのかも)」は、
「まだ出世の余地のある人間」、つまり、「部長クラスのポテンシャルを持っている平社員」などによって行われるのだそう。
なるほどね。
ピーターの法則 -Wikipedia http://t.co/iYeLRoRGMr 全ての階層が最終的には無能な人間によって満たされるとか、悲劇
— 桜餅 (@sakuramochi702) 2013年10月18日
昇進させるっていうのはすごいリスク
そもそも「できるやつ」を昇進させるのは、とてもリスキーなことです。
なぜなら、昇進後に次の役職でパフォーマンスあげることなんか全く保証されてないんだから。
もし次の役職で昇進前以上のパフォーマンスを出してくれれば組織としても万々歳ですが、
そうじゃなかったら、組織としては「今までできてたことができなくなった」だけで、すごいマイナス。
そして、おそらく昇進した人が次の役職で以前以上のパフォーマンスをあげる確率は、
さほど高くないのです。
だとしたらそんなリスクをとらず、「昇進はランダムで決めるお」とか言ってる方が組織全体としてのパフォーマンスを劣化させなくてすみそうだし*1、
「年齢関係なくデキルやつから昇進させる(キリッ」と比較しても必ずしも劣ってはいなさそうですね。
全員を1段階下げれば解決するんじゃね?
とはいうものの、「昇進はくじ引きで決めた方が良い」というのはどうも納得できない。
それなら、限界まで昇進させた後、それ以上の昇格が無理そうなやつを1段階下げればいいんじゃね?
というのは誰もが思うところ。
そもそもピーターの法則は、
「平社員に必要な能力を1とすると、課長に必要な能力は2、部長は3、役員は4、社長は5」みたいなのが前提になってる*2。
だから、能力が2.5の人は一旦部長になるけど、部長としては力不足なので、
結果、無能な部長として会社のお荷物になってしまう、
という悲劇が起こるんだけど、これってこの人をもう一度課長にしてやればいいだけの話だよなぁと。
ただ、それが難しいのはなんでかと言うと、
日本の場合、役職と給料が比例してしまってるから。
だから一旦部長になった人をもう一度課長に戻すのは難しい。
「パフォーマンス出してない部長」よりも「パフォーマンス出してる課長」の方が給料高くなるような給与体系にしたら、
この問題というか閉塞感というか悲劇というか、
は、避けられるんじゃないかと思うんです。
最近では成果主義とか言って、それこそ「年功序列なんか古い。若くても成果出してればどうどん昇進させる」みたいなのが増えてますが、
そうじゃなくて、「昇進制度なんかもう古い。平でも十分な成果出してれば課長や部長に負けないくらいの報酬出すぜ」とかの方が、本当は意味ある成果主義なのかもしれません。
以上、つい最近ピーターの法則を知り、
立て続けにイグノーベル賞のことも知ったので何かの縁かなと思って書いてみました。
終わり。